通販サイトの会社概要は、実在する別会社のものかもしれない
会社名も住所も電話番号も書いてあるのに、その情報がサイト運営者とは無関係の実在企業のものだった。国民生活センターと消費者庁の公表資料を読み、掲載されている悪質通販サイト45件を数えました。会社情報の実在確認だけでは足りない理由の話です。

初めて使う通販サイトで会社概要を開き、社名・住所・電話番号がそろっているのを見て、少し安心する。私はそういう見方をしていました。
2026年9月1日に、消費者庁と国民生活センターの公表資料を読みました。書かれていたのは、その会社情報が、サイトの運営者のものとは限らないということでした。
「書いてある」と「その会社が運営している」は別のこと
国民生活センターは2025年5月21日の発表「ネット通販で商品が届かない!事業者所在地や連絡先が虚偽の可能性も!」で、悪質通販サイトに載っている事業者名や連絡先が、実際の運営事業者のものではなく「実在する無関係の事業者情報を無断で掲載している場合もあります」と書いています。同じ発表で、令和7年(2025年)5月から、公表中の「悪質通販サイト情報」にその旨を追記する運用を始めたことも告知しています。
2026年6月17日の発表「悪質通販サイトにご注意ください」の報告書本文には、相談事例の調査結果として「サイトに記載されていた事業者名、住所、電話番号等の事業者情報は、実在する無関係の事業者の情報が無断で転載されていた」という一文があります(2026年2月・40歳代男性の事例)。
想定していなかったのはここでした。連絡先が空欄なのではなく、実在する会社の連絡先が埋まっている。だから社名を検索すれば、ちゃんとした会社が出てきます。
45件のうち27件
同じ報告書には、公表中の「悪質通販サイト情報」の一覧が別添として付いています。掲載ウェブサイト総数は45サイト(2026年6月17日時点)。
備考欄に「このサイトには当該サイト運営事業者とは無関係の事業者情報が記載されています。」という注記が付くサイトがどれくらいあるのか、一覧を数えました。45件のうち27件でした。
ただし、この数え方には範囲があります。
- 一覧は現存するウェブサイトを網羅したものではない、と資料自身が書いています。悪質通販サイト全体の比率ではありません
- 注記の運用は2025年5月開始ですが、2024年に掲載されたサイトにも付いています。遡って付けられたものが含まれます
- 注記が無いことは、無関係の事業者情報が載っていないことの証明にはなりません
それでも、公表されている一覧の6割に注記が付いているという事実は、「会社情報が書いてあるか」という確認の効きにくさを示していると思いました。
同じ日付の資料で、チェックリストの項目数が違った
国民生活センターのテーマ別特集ページ「悪質通販サイトのトラブルにあわないために」(2026年6月17日公表)のチェックリストは6項目。同じ日付の報告書本文PDFは9項目です。
PDFにだけあるのは、フリマサイトの画像・文言の流用、コード決済の「送る」機能で個人アカウント宛に支払わせる手口、そして次の脚注でした。
表記されていたとしても当該サイト運営事業者とは無関係の事業者情報が記載されている場合もあるので、注意が必要です。特に初めて利用するサイトの場合は、上記の点に加えて、サイトURL に不自然な点がないか、正規サイトが別に存在しないか等についても注意してください。
これは「サイト上に事業者の名称、住所、電話番号が明確に表記されていない」という項目に付いた注です。チェックリスト自身が、その項目だけでは足りないと注記していることになります。
同じPDFには「中にはいずれの項目にも該当しない悪質通販サイトもありますが」という但し書きもあります。ウェブページ版だけを見て「6項目を確認すれば足りる」と読むと、この2か所を落とします。
消費者庁の5項目とは、重なっていない
消費者庁の「偽サイト」にご注意ください!は、購入手続前に確認することとして5項目を挙げています。
- 公式通信販売サイトのURLであるか
- 連絡先(電話番号、メールアドレスなど)が表示されているか
- 商品価格が極端に安くないか
- 支払方法が限定的でないか
- 日本語が不自然でないか
国民生活センターの9項目と並べると、はっきり重なるのは価格・支払方法・日本語の3つです。連絡先は部分的に重なります。消費者庁が挙げているのは「連絡先(電話番号、メールアドレスなど)が表示されているか」で、国民生活センターは「事業者の名称、住所、電話番号」を1項目にまとめています。名称と住所に触れているのは国民生活センター側だけです。
消費者庁だけにあるのが「公式通信販売サイトのURLであるか」。国民生活センターだけにあるのが、希少品が入手可能になっていること、返品・返金ルールの記載、個人名義の口座、フリマサイトからの流用、コード決済の「送る」機能です。
どちらかが正しいという話ではなく、見ている角度が違うのだと読みました。片方だけを覚えて済ませないほうがよさそうです。
法律が求めているのは、書いてあることだけではない
日本の通販サイトの会社情報は、特定商取引法にもとづく表示です。消費者庁の特定商取引法ガイドを読むと、求められているのは記載の有無だけではありませんでした。
- 名称は、個人事業者なら戸籍上の氏名または商業登記された商号、法人なら登記簿上の名称。通称や屋号、サイト名は認められない
- 住所は現に活動している住所。番地を省略した表示や、私書箱だけの表示は認められない
- 電話番号は確実に連絡を取れる番号。使われていない番号のほか、意図的に常に電話を取らない状態にしている場合も、表示したことにならない
- 法人がインターネットで広告する場合は、名称・住所・電話番号に加えて、代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
「特定商取引法に基づく表記」「会社概要」という言い方も、このガイドに出てきます。冒頭から容易にたどり着けるリンクやタブがあれば表示義務を満たす、という説明の中の例です。私たちが探しているリンク名は、そこから来ています。
もうひとつ、報告書の脚注に適用範囲の説明がありました。サイトが日本語表示であるなど日本向けに販売していて、日本国内在住者が購入する場合は、特定商取引法の対象になる。海外に拠点があると思われるサイトでも、対象から外れるわけではないということです。
ここから先は、私の考えです
資料から言えるのはここまでです。以下は、確認の道具を作っている側として考えていることで、資料に書かれていることではありません。
会社名が実在するかどうかだけを調べても、この形の問題は通り抜けてしまいます。実在するからです。だから私は、ひとつの項目で判定しようとするのをやめました。
初めて見る通販サイトなら、URLに不自然なところがないか、正規サイトが別にないか、運営者として誰の名前が書かれているか、住所と電話番号が形として整っているか、返品・返金の条件が書かれているか、支払方法と価格に不自然なところがないか。順に見て、引っかかる箇所がいくつあるかを数えます。ひとつでは決めません。
これを毎回やるのは面倒です。会社概要や特定商取引法に基づく表記のリンクを探し、書かれている項目を拾い、抜けているものを覚えておく。家族から「このサイトで買って大丈夫かな」と聞かれたとき、まずどこを開けばいいのかで止まることもあります。
この拡張も、サイトが安全か危険かを判定しません。ページに書かれていることと、書かれていないことを並べるだけです。判定できないから並べる、という形にしてあります。
確かめられなかったこと
- 特定商取引法には、請求があれば遅滞なく提供する旨を表示している場合に、広告の表示事項を省略できる規定があります。事業者の氏名・住所・電話番号がその対象に含まれるかは、施行規則の条文に当たれていないため扱っていません
- 「悪質通販サイト情報」を公表している越境消費者センターのウェブサイトは、2026年9月以降にリニューアル予定と報告書に書かれています。この記事のリンク先は変わる可能性があります
出典
いずれも2026年9月1日にアクセスしました。
| 資料 | 公表主体 | 公表日 |
|---|---|---|
| 悪質通販サイトにご注意ください−フリマサイトの画像や文言を流用したサイトも!− | 国民生活センター | 2026年6月17日 |
| ネット通販で商品が届かない!事業者所在地や連絡先が虚偽の可能性も! | 国民生活センター | 2025年5月21日 |
| 悪質通販サイトのトラブルにあわないために(テーマ別特集) | 国民生活センター | 2026年6月17日 |
| 「偽サイト」にご注意ください! | 消費者庁 | ページ上に日付の表記なし |
| 特定商取引法ガイド 通信販売広告について | 消費者庁 | ページ上に日付の表記なし |
45件のうち27件という数は、2026年6月17日時点の別添一覧を私が数えたものです。公表資料に集計値として載っている数字ではありません。
なお、ここに挙げた各機関は、特定の事業者の商品・サービスを推奨したり、保証したりするものではありません。この記事で紹介した道具についても同じです。