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特殊詐欺に占める高齢者の割合は51.3% — 低下の背景に若年層のニセ警察詐欺

特殊詐欺の認知件数に占める65歳以上の割合は51.3%で、前年から14.0ポイント下がりました。ただし65歳以上の認知件数そのものは14,273件で535件増えています。割合の低下は、高齢者が安全になったことを示す数字ではありません。

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執筆 k-wada(Legacy Tools)

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この記事の見出し
  1. 三つの資料は、それぞれ別の質問にしか答えられない
  2. 51.3%は構成比で、高齢者の被害が減ったという意味ではない
  3. 手口によって、65歳以上の割合は20.9%から98.9%まで開く
  4. 相談件数は過去最高。ただし「高齢者の38.6%がトラブルに遭った」ではない
  5. 70代でもネット利用は多い。ただし主な用途は電子メール
  6. 次に公表される数字は、今年の数字とそのまま比べられない
  7. 統計から言えること、言えないこと
  8. 参照資料

離れて暮らす家族のことが気になったとき、まず何を見ればいいのか分かりませんでした。2026年8月に、公開されている資料を三つ読みました。警察庁の特殊詐欺統計、国民生活センターの消費生活相談、総務省の通信利用動向調査です。

読む前に想定していたのは、「年齢が上がるほど危険が増える」という形の数字が出てくることでした。三つとも、そうはなっていませんでした。ただし、それは「高齢者は危なくない」という意味ではありません。この三つの資料は、年代別の人口を分母にした被害率を持っていないので、年代ごとの危険度そのものを比べることができないからです。

三つの資料は、それぞれ別の質問にしか答えられない

警察庁は2025年1〜12月の特殊詐欺の認知件数と被害額を、法人被害を除く認知件数を分母として数えている。国民生活センターは2024年度の消費生活相談の件数を、相談の全件数を分母として数えている。総務省は2025年8月末時点の個人のインターネット利用を、インターネット利用者を分母として数えている。三つの対象期間はそろっていない。

数字を並べる前に、どの資料が何に答えられるのかを先に確認します。三つとも「高齢者とネット上の危険」に関わる資料ですが、数えているものも分母も違うため、そのまま並べて比較することはできません。

表1 三つの資料の対象・分母・限界。いずれも各資料の最新版で、2026年8月28日に原典(PDF)を取得して確認した。
項目警察庁国民生活センター総務省
数えているもの特殊詐欺の認知件数と被害額消費生活相談の件数個人のインターネット利用
分母法人被害を除く認知件数消費生活相談の全件数インターネットを利用したと答えた人
対象期間2025年1〜12月(確定値)2024年度2025年8月末時点
公表日2026年5月22日2025年9月3日2026年5月29日
この資料だけでは言えないこと年代別の人口を分母にした被害率高齢者の何%がトラブルに遭ったかその年齢層の全員に対する比率

三つとも「それぞれの最新」ですが、対象期間はそろっていません。65歳以上の内訳を出す統計は年1回で、公表時期も資料ごとに違うためです。同じ年の話として並べることはできません。

51.3%は構成比で、高齢者の被害が減ったという意味ではない

警察庁の令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)(PDF・外部サイト/2026年5月22日公表)は、2025年1月から12月までの確定値です。

割合が下がった一方で、件数は増えています。矛盾ではありません。51.3%は「法人被害を除く認知件数のうち65歳以上が占める割合」であって、65歳以上の被害が増えたか減ったかを表す数字ではないからです。

動いたのは主に分母のほうでした。2025年の特殊詐欺の認知件数は27,832件で前年より6,789件(+32.3%)増え、被害額は1,423.1億円で前年のほぼ2倍(+98.0%)になっています。全体が大きく増えたので、件数が増えた65歳以上の構成比は下がりました。

割合が下がった理由も資料に書かれています。2025年分から統計を取り始めた「ニセ警察詐欺」(警察官等をかたり、捜査を名目に現金等をだまし取る手口)で、20代・30代の被害が広がりました。オレオレ詐欺の認知件数に占める20代と30代の割合は27.9%(前年比+14.4ポイント)、架空料金請求詐欺では30.0%(同+6.8ポイント)です。資料はこれを「総認知件数に占める高齢者の割合が減少している主たる要因」と書いています。

ニセ警察詐欺だけで認知件数11,014件・被害額1,005.0億円を占めます。

手口によって、65歳以上の割合は20.9%から98.9%まで開く

表2 手口別の高齢者(65歳以上)の割合。分母は法人被害を除く認知件数。対象期間は2025年1〜12月。出典は警察庁の確定値資料(2026年5月22日公表)p.5。色を付けた2行は、本文で対比している手口。
手口65歳以上の割合
特殊詐欺全体51.3%
オレオレ詐欺45.4%
預貯金詐欺98.8%
注目架空料金請求詐欺33.2%
還付金詐欺81.1%
注目キャッシュカード詐欺盗98.9%
その他20.9%

同じ「特殊詐欺」という言葉の中で、20.9%から98.9%まで開きます。預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗は、法人被害を除く認知件数の約99%が65歳以上です。一方で架空料金請求詐欺は33.2%、つまり3件に1件です。

件数の山と金額の山も、別のところにあります。ニセ警察詐欺の認知件数は30代が2,239件で最も多く、次いで20代が1,718件。一方で被害額は70代が274.6億円、60代が256.3億円で最も大きい。若い年代が件数に、高齢の年代が金額に表れています。

相談件数は過去最高。ただし「高齢者の38.6%がトラブルに遭った」ではない

国民生活センターの2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況(PDF・外部サイト/2025年9月3日公表)では、契約当事者が65歳以上の相談は304,130件でした。相談全体の38.6%を占め、2020年度以降で最高です。

表3 契約当事者が65歳以上の消費生活相談の件数と、相談全体に占める割合。分母は全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の全件数。集計基準は2025年7月31日までのPIO-NET登録分。出典は国民生活センターの当該資料(2025年9月3日公表)図1。色を付けた行が最新年度。
年度65歳以上の相談件数相談全体に占める割合
2020年度271,668件33.0%
2021年度251,850件34.1%
2022年度268,876件34.2%
2023年度277,604件35.8%
注目2024年度304,130件38.6%

金額は想定と逆でした。平均契約購入金額は65歳未満が約90万円、65歳以上が約71万円で、高齢者のほうが低い。平均既支払金額は65歳未満が約45万円、65歳以上が約46万円でほぼ同じです。65歳以上では、契約購入金額5万円未満が6割以上を占めます。

70代でもネット利用は多い。ただし主な用途は電子メール

総務省の令和7年通信利用動向調査(2025年調査)(PDF・外部サイト/2026年5月29日公表・調査時点は2025年8月末)によると、個人のインターネット利用率は60〜69歳で男性92.0%・女性90.4%、70〜79歳で男性77.0%・女性67.5%。80歳以上になると男性45.3%・女性32.3%まで下がります。

インターネット利用者全体では「商品・サービスの購入・取引」が48.2%(複数回答)。ただし年齢階層別の上位5項目を見ると、50歳代以上のどの階層でも1位は「電子メールの送受信」で、60歳代以上では買い物は上位5項目に入っていません。

想定と違ったのはここでした。高齢になるとネットから離れる、のではありません。使ってはいるけれど、使う中身の重心が違う

次に公表される数字は、今年の数字とそのまま比べられない

この記事の数字を引き写して使う場合、少なくとも三つ、そのままつながらない点があります。

  • 手口の区分が変わる。 警察庁の統計では、2026年分として次回公表される統計から、ニセ警察詐欺が独立した手口になり、SNS型投資・ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口に編入されます。手口別の割合は前年と単純に比較できなくなります。
  • 同じ年度でも集計基準日で件数が変わる。 PIO-NET は後から登録が積み上がるため、2023年度の65歳以上の相談件数は、本文で使った資料(2025年7月31日登録分まで)で277,604件、別の資料(2025年5月末日登録分まで)で276,988件です。基準日ごと引く必要があります。
  • 65歳以上の内訳は2024年度が最新。 2025年度の消費生活相談(100.6万件)は既に公表されていますが、年代の区切りが70歳以上で、65歳以上の内訳を持ちません。

統計から言えること、言えないこと

ここまでが資料に書かれていることです。以下は、それを読んだうえでの私の判断で、資料に書かれていることではありません。

確認するときは、割合ではなく件数と金額を見るほうが実態に近いと考えています。構成比は、他の年代で何が起きたかによって、自分の年代に何も起きていなくても動きます。今回がその例でした。

「高齢だから全部を制限する」という対処は、この数字とは形が合いません。預貯金詐欺やキャッシュカード詐欺盗のように65歳以上が約99%を占める手口がある一方で、架空料金請求詐欺のように33.2%の手口もあるからです。年齢で一律に線を引くより、狙われやすい手口の側から見るほうが、この資料とは整合します。

ただし、この三つの資料からは「どの年代がより危険か」を出すことはできません。そのためには年代別の人口を分母にした被害率が要りますが、いずれの資料にもその数字はありません。年代別の危険度を比べたい場合は、別の統計を探す必要があります。

参照資料

  • 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」 — 発行: 警察庁 組織犯罪対策第二課・生活安全企画課/対象期間: 2025年1〜12月(確定値)/公表日: 2026年5月22日/PDF・外部サイト(引用箇所は p.5「ウ 被害者の年齢層等」)
  • 国民生活センター「2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況」 — 発行: 独立行政法人国民生活センター/対象期間: 2024年度(2025年7月31日までのPIO-NET登録分)/公表日: 2025年9月3日/PDF・外部サイト
  • 総務省「令和7年通信利用動向調査 報告書(世帯編)」 — 発行: 総務省/調査時点: 2025年8月末/公表日: 2026年5月29日/PDF・外部サイト

いずれも2026年8月28日に原典(PDF)を取得し、本文の数値を1件ずつ突き合わせています。次の確認予定は2026年9月30日で、国民生活センターの65歳以上版(例年9月上旬公表)の新年度版が出たら表3を更新します。

タグ: 統計・特殊詐欺・高齢者・家族