ノート送る前に

特殊詐欺の高齢者の割合は、1年で14ポイント下がった

高齢の家族が気になって、警察庁・国民生活センター・総務省の三つの資料を読み比べました。年齢が上がるほど危険が増える、という単純な形にはなっていませんでした。年代によって遭遇する危険の種類が変わっていく話です。

送る前に 仕事で試して分かったこと

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離れて暮らす家族のことが気になったとき、まず何を見ればいいのか分かりませんでした。2026年8月に、公開されている資料を三つ読みました。警察庁の特殊詐欺統計、国民生活センターの消費生活相談、総務省の通信利用動向調査です。

読む前に想定していたのは、「年齢が上がるほど危険が増える」という形の数字が出てくることでした。三つとも、そうはなっていませんでした。

使ってはいる。ただし、何に使うかが違う

総務省の令和7年通信利用動向調査(2026年5月29日公表・調査時点は2025年8月末)によると、個人のインターネット利用率は60〜69歳で男性92.0%・女性90.4%。70〜79歳で男性77.0%・女性67.5%。80歳以上になると男性45.3%・女性32.3%まで下がります。

利用の中身も見ておきます。この調査で「何に使ったか」を聞かれるのは、インターネットを利用したと答えた人だけです。そのため以下の割合は、その年齢の全員に対する比率ではありません。

インターネット利用者全体では「商品・サービスの購入・取引」が48.2%(複数回答)。ただし年齢階層別の上位5項目を見ると、50歳代以上のどの階層でも1位は「電子メールの送受信」で、60歳代以上では買い物は上位5項目に入っていません。

想定と違ったのはここでした。高齢になるとネットから離れる、のではありません。使ってはいるけれど、使う中身の重心が違う

相談は増えている。ただし「38.6%が被害に遭う」ではない

国民生活センターの2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況(2025年9月3日公表)では、契約当事者が65歳以上の相談は304,130件。相談全体の38.6%を占め、2020年度以降で最高でした。

年度65歳以上の相談件数相談全体に占める割合
2020年度271,668件33.0%
2021年度251,850件34.1%
2022年度268,876件34.2%
2023年度277,604件35.8%
2024年度304,130件38.6%

読み方に注意が要ります。38.6%は消費生活相談全体の中で65歳以上が占める割合であって、高齢者の38.6%がトラブルに遭ったという意味ではありません。

もう一つ、想定と逆だったのが金額です。平均契約購入金額は65歳未満が約90万円、65歳以上は約71万円で、高齢者のほうが低い。平均既支払金額は65歳未満が約45万円、65歳以上が約46万円でほぼ同じでした。65歳以上では、契約購入金額5万円未満が6割以上を占めます。

年齢が上がるほど危険、でもなかった

警察庁の令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)(2026年5月22日公表)を見ると、もっとはっきりします。

特殊詐欺全体で65歳以上が占める割合は51.3%。ただしこれは、前年から14.0ポイント下がった数字です。

手口65歳以上の割合
特殊詐欺全体51.3%
オレオレ詐欺45.4%
預貯金詐欺98.8%
架空料金請求詐欺33.2%
還付金詐欺81.1%
キャッシュカード詐欺盗98.9%
その他20.9%

いずれも法人被害を除いた認知件数ベースです。同じ「特殊詐欺」という言葉の中で、20.9%から98.9%まで開きます。預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗はほぼ全員が65歳以上で、架空料金請求詐欺は3分の1です。

割合が下がった理由も資料に書かれています。令和7年から統計を取り始めた「ニセ警察詐欺」(警察官等をかたり、捜査を名目に現金等をだまし取る手口)で、20代・30代の被害が広がりました。オレオレ詐欺の認知件数のうち20代と30代が27.9%(前年比+14.4ポイント)、架空料金請求詐欺では30.0%を占めています。

ただし、件数の山と金額の山は別のところにあります。ニセ警察詐欺の認知件数は30代が2,239件で最も多く、次いで20代が1,718件。一方で被害額は70代が274.6億円、60代が256.3億円で最も大きい。若い年代が件数に、高齢の年代が金額に表れています。

三つの資料は、同じ年を見ていない

資料対象期間公表日
国民生活センター(65歳以上)2024年度2025年9月3日
警察庁(特殊詐欺・確定値)2025年1〜12月2026年5月22日
総務省(通信利用動向調査)2025年8月末時点2026年5月29日

三つとも「それぞれの最新」ですが、対象期間は揃っていません。65歳以上の内訳を出す統計は年1回で、公表時期も資料ごとに違うためです。同じ年の話として並べることはできません。

なお警察庁の統計は、令和8年からニセ警察詐欺が独立した手口になり、SNS型投資・ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口になります。来年の数字は、今年の数字とそのままつながりません。

ここから先は、私の解釈です

資料から言えるのはここまでです。以下は道具を作っている側として考えていることで、資料に書かれていることではありません。

年代によって遭遇しやすい危険の種類が変わるなら、「高齢だから全部を制限する」という対処は形が合っていないことになります。預貯金詐欺のようにほぼ全員が65歳以上の手口がある一方で、架空料金請求詐欺のように年代の広い手口もあるからです。

そして、確認する側の負荷は画面のほうでも増えています。残り時間の表示、繰り返される確認画面、SMSに届いた番号を覚えて元の画面に戻る操作。これは年齢に関係なく面倒です。

では確認画面を増やせばいいのか。私はそうは思いません。毎回「本当にいいですか」と聞かれれば、そのうち読まずに押すようになります。必要なのは確認の数ではなく、危険が大きくなる瞬間に一度だけ止まることだと考えています。

家族がずっと隣にいることはできない

分からなければ家族に聞けばいい。それも大切です。ただ、ネットを使うたびに電話するわけにもいきません。

家族に相談するほどではない、小さな不安をその場で受け止める。判断を代わりにするのではなく、危なそうなところで一度だけ、もう一度見る機会をつくる。年齢に合わせて全部を制限するのではなく、事故が起きやすい瞬間にだけ小さな1クッションを置く。作っている道具は、その形にしてあります。

タグ: 統計・特殊詐欺・高齢者・家族

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