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海賊版サイトで気をつけたいのは、著作権だけではない — 広告表示回数の25%が詐欺・マルウェア

権利侵害サイトの広告を監視したEUIPOの2025年調査では、詐欺・マルウェアに分類された広告が推定表示回数の24.62%を占めました。前年は14%です。文化庁・WIPO・警察庁の資料と読み比べ、よく引用される「11.4億アクセス/月」「年間2兆円」が何をいつ数えた数字なのかを確認しました。

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執筆 k-wada(Legacy Tools)

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この記事の見出し
  1. 四つの資料は、それぞれ別のものを数えている
  2. 「11.4億アクセス/月」は、2024年9月の数字
  3. 侵害サイトの広告は、表示回数の25%が詐欺・マルウェアに分類された
  4. 見た目で判断できないのは、人間だけではない
  5. 「DOWNLOAD」と書いてあっても、押す必要はない
  6. この四つの資料からは言えないこと
  7. ここから先は、私の考えです
  8. 参照資料
手描き風のイラスト。左はブラウザのページで、記事本体よりも広告枠のほうが場所を占めており、大きな下向き矢印のダウンロードボタン、再生ボタン付きの動画枠、警告マークの出た小窓、赤い感嘆符の小窓、設定画面のような小窓が重なっている。中央では虫めがねがそれらを映し、点線がドーナツ型の円グラフへ伸びる。円グラフは4分の1だけが青く塗られている。そこからさらに点線が右へ分かれ、虫のアイコン、釣り針とリストのアイコン、ドクロの付いた書類のアイコンに至る。右端にはチェックマークの並ぶパネルと盾が置かれている
記事の内容を表す概念図です。実際のサイトやアプリの画面ではありません。

「無料で漫画が読める」「映画が見られる」。そういうサイトを見つけたとき、まず問題になるのは著作権です。ただ、利用する側から見ると、もう一つあります。そのページに表示される広告やボタンを信用してよいのかという問題です。2026年9月5日に、四つの公開資料を読みました。

四つの資料は、それぞれ別のものを数えている

数字を並べる前に、どの資料が何に答えられるのかを確認します。四つとも「海賊版サイトと危険」に関わりますが、数えているものも対象地域も時点も違うため、そのまま足したり並べたりはできません。

表1 今回読んだ四つの資料。数えているもの・対象期間・公表日・その資料だけでは言えないこと。いずれも2026年9月5日に原典(PDF/ウェブページ)を取得して確認した。
資料数えているもの対象期間この資料だけでは言えないこと
文化庁(事業説明資料)海賊版マンガ上位20サイトへの月間アクセス数2024年8月・9月現在のアクセス数、サイト訪問者の被害
EUIPO(広告監視調査)権利侵害サイトの広告の種類別・推定表示回数2025年1月1日〜11月20日日本国内の状況、実際に感染した人数
WIPO ACE(寄稿文書)海賊版サービスで確認されたマルウェアの類型記載なし発生頻度、日本での確認状況
警察庁(フィッシング対策)フィッシングの手口と被害防止対策記載なし海賊版サイトに固有の傾向

四つとも「それぞれの最新」ですが、対象期間はそろっていません。並べて読めるのは、傾向であって合計ではありません。

「11.4億アクセス/月」は、2024年9月の数字

文化庁のAIを活用した海賊版サイトの検知・分析実証事業(PDF・外部サイト/令和6年度補正予算の事業説明資料。文化審議会著作権分科会 法制度に関するワーキングチーム第2回・2024年12月24日の参考資料8)に、次の記述があります。

この資料に載っているグラフは、8月と9月の2点だけです(日本向け4.0→5.5、英語版6.1→5.9・単位は億アクセス/月)。出典表記は「海賊版マンガサイトによる被害状況例(ABJ,2024)」で、計測したのは文化庁ではなく一般社団法人ABJです。

そして、同じ文化庁著作権課が1年3か月後に出した資料では、書きぶりが変わっています。内閣官房の海賊版等対策官民実務者級連絡会議 第4回(2026年3月26日)の資料3(PDF・外部サイト)です。

現在形が過去形になり、「一時」が足されています。11.4億アクセス/月は、現在の値として引用できる数字ではありません。ただし減ったままでもなく、2025年夏以降また増えている、というのが2026年3月時点の説明です。新しい数値は示されていません。

「推定年間2兆円」も、マンガのアクセス数の直後に置かれているために誤読しやすい数字でした。同じ資料が引用する「知的財産推進計画2025」では、こう定義されています。

マンガ以外も含む日本のコンテンツ(ゲーム・音楽・出版・映像)のインターネット上の海賊版被害額は、2022 年で約2兆円(2019 年比5倍)と推計されており

数えているのは2022年時点の、日本コンテンツ全体です。マンガ海賊版サイトの年間被害額ではありません。

侵害サイトの広告は、表示回数の25%が詐欺・マルウェアに分類された

EU知的財産庁(EUIPO)が2026年6月に公表したOnline Advertising on IPR-Infringing Websites and Apps 2025(PDF・外部サイト・英語)は、2025年1月1日から11月20日まで、5,671サイトの広告を監視した調査です。対象はEU加盟18か国、対照国として英国と米国。監視対象サイトの37%は司法・行政機関が違法と判断したサイト、63%は「まだ違法認定はされていないが侵害が確認され、EUの消費者に人気のあるサイト」です。

数字の性質に注意が要ります。

この割合は、どこを切っても同じではありませんでした。

表2 詐欺・マルウェア広告が推定広告表示回数に占める割合。分母は各区分の推定広告表示回数。対象期間は2025年1月1日〜11月20日。出典はEUIPO「Online Advertising on IPR-Infringing Websites and Apps 2025」(2026年6月公表)。
区分詐欺・マルウェアの割合
注目監視対象サイト全体24.62%
監視対象アプリ全体0.28%
ルーマニア(最高)34%
EU中央値23%
米国(対照国)29%
英国(対照国)19%
注目四半期の最高(Q3)30%

サイトとアプリで約88倍の差があります。ブラウザで開くサイトと、アプリストア外のアプリでは、広告のあり方が違うということです。四半期でも、第3四半期の30%から第4四半期の19%まで動きます。

割合が上がった理由も確かめました。監視対象サイトの推定広告表示回数の総数は、2024年の283億回から2025年は237億回へ減っています(全監視国ベース)。総数が減れば、実数が変わらなくても割合は上がります。ただし掛け合わせると、詐欺・マルウェアの表示回数そのものも増えている計算になりました(約40億回→約58億回)。これは私の概算で、報告書に載っている数値ではありません。割合の母数も明示されていないため、桁の目安として扱っています。

見た目で判断できないのは、人間だけではない

同じEUIPOの報告書には、消費者向けではない指摘もありました。広告業界が導入しているAIベースのブランドセーフティ判定について、こう書かれています。

さらに、ドメインの評判と検索順位を先に作るために「きれいな」サイトとして運営し、あとから侵害コンテンツへ切り替える手口も報告されています。広告を出す側の自動判定ですら見た目に欺かれている、というのが今回いちばん想定と違った点でした。

見た目で判断できないという指摘は、日本の資料にもあります。警察庁のフィッシング対策(外部サイト)は、被害防止対策の項でこう書いています。

電子メールに記載されたリンクは偽装可能なほか、正規サイトに類似したドメイン名を付したフィッシングサイトも多く存在することから、見た目でリンクの真偽を判断することは非常に困難です。

この記述はメールやSMSのリンクについてのものですが、同じページには「検索サイトの広告から誘引する方法」や「広告などからフィッシングサイトに誘導される場合がある」という記述もあります。広告経由の誘導は、海賊版サイトに限った話ではありません。

「DOWNLOAD」と書いてあっても、押す必要はない

具体的な手口の類型は、WIPO(世界知的所有権機関)の執行諮問委員会に提出されたThe Nexus Between Malware and Piracy(PDF・外部サイト・英語/WIPO/ACE/18/34・2026年5月19日)にまとまっています。挙げられているのは、次のようなものです。

  • 偽のポップアップ、ポップアンダー、クリック再生(click-to-play)、偽のダウンロードボタンを経由して配布されるランサムウェア
  • システム警告を模した表示で、悪意あるプログラムを入れさせるスケアウェア
  • 偽のアップデート・メディアプレーヤー・インストーラーとして配布されるトロイの木馬
  • ID・パスワード・二要素認証コードを集める偽のログイン画面や支払い画面

同じ文書には「広告の12%がマルバタイジング」といった数値も出てきますが、こちらは別の民間団体の報告書からの孫引きでした。原典に当たれていないので、この記事では採用していません。

この四つの資料からは言えないこと

  • 日本のサイトの広告がどうなっているか。 EUIPOが計測したのはEU18か国と英米での表示です。日本を対象にした同種の公表結果には、今回たどり着けませんでした(政府の工程表には、日本民間放送連盟が違法アップロードされたコンテンツに表示される広告を調査する、と書かれています)
  • サイトを開いた人が、どれくらいの確率で被害に遭うか。 表示回数の割合は、感染率でも被害率でもありません
  • 海賊版サイトが他のサイトより危険か。 今回の資料には、通常のサイトを対照群として同じ方法で測った比較がありません
  • 11.4億アクセス/月が今どうなっているか。 2026年3月の資料は増減の方向しか書いておらず、数値は示していません

ここから先は、私の考えです

資料から言えるのはここまでです。以下は、確認のための道具を作っている側として考えていることで、資料に書かれていることではありません。

四つを読んで残ったのは、「そのページに表示されているものは、そのページに必要な操作とは限らない」という一点でした。大きな「DOWNLOAD」ボタン、突然のセキュリティ警告、ブラウザ通知の許可、拡張機能のインストール要求、メールアドレスやカード番号の入力欄。EUIPOが数えているのは広告なので、この全部がその区分に入るわけではありません。ただし偽のボタンや偽の警告は、区分の説明そのものです。

だから私は、知らない画面が出てきたときは、押さない・入力しない・インストールしない、をまず選びます。いったんタブを閉じて、必要なら公式サイトや公的機関の情報を別の経路から確認します。ページ内のリンクや連絡先ではなく、別の経路から、という部分が大事だと考えています。警察庁がフィッシング対策として書いているのも、同じ形の対処です。

私たちも、リンクやサイトの運営者情報を確認するための小さな拡張機能を公開していますが、それも「このサイトは安全です」と判定するものではありません。運営者情報が見つかったから安全とも限らず、怪しい特徴が一つあったから詐欺だとも断定できません。できるのは、そのまま進む前に確認する材料を少し増やすことだけです。

参照資料

いずれも2026年9月5日に原典を取得し、本文の数値を1件ずつ突き合わせています。

  • 文化庁「AIを活用した海賊版サイトの検知・分析実証事業」 — 発行: 文化庁著作権課/対象期間: 2024年8月・9月(グラフ)/文化審議会著作権分科会 政策小委員会 法制度に関するワーキングチーム(第2回・2024年12月24日)参考資料8/PDF・外部サイト(アクセス数の出典表記はABJ, 2024)
  • 文化庁著作権課「海賊版対策に係る文化庁予算 御説明資料」(令和8年3月) — 内閣官房 海賊版等対策官民実務者級連絡会議 第4回(2026年3月26日)資料3/PDF・外部サイト(引用箇所は2ページ「AIを活用した海賊版サイト検知実態把握等調査事業」)
  • EUIPO "Online Advertising on IPR-Infringing Websites and Apps 2025" — 発行: 欧州連合知的財産庁(EUIPO)/対象期間: 2025年1月1日〜11月20日/公表: 2026年6月/ISBN 978-92-9156-374-6/PDF・外部サイト・英語(24.62%は3.3.3項および6章、総表示回数は3.1.2項。© EUIPO 2026・CC BY 4.0)
  • WIPO/ACE/18/34 "The Nexus Between Malware and Piracy" — 執筆: Elena Blobel(国際レコード産業連盟)/WIPO執行諮問委員会 第18回会合(2026年6月2〜4日)への寄稿/文書日付: 2026年5月19日/PDF・外部サイト・英語(著者個人の見解であり、WIPO事務局・加盟国の見解ではない旨の但し書きあり)
  • 警察庁「フィッシング対策」 — 発行: 警察庁サイバー警察局/ページ上に公表日・更新日の表記なし/外部サイト

283億回→237億回から求めた約40億回→約58億回は、公表資料に集計値として載っている数字ではなく、私が掛け合わせた概算です。

なお、ここに挙げた各機関は、特定の事業者の商品・サービスを推奨したり、保証したりするものではありません。この記事で触れた道具についても同じです。

タグ: 統計・公開資料・広告・フィッシング

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