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メール誤送信は年間何件か — 公開資料はメールだけを数えていない

メールの誤送信が実際にどれくらい起きているのかを、公開資料で確認しました。個人情報保護委員会の「誤送付」2,889件は郵便物なども含む区分で、東京商工リサーチは「誤表示・誤送信」でまとめ、IPAの10大脅威は発生件数の順位ではありません。メールだけを切り出した数字は見つかりませんでした。

送る前に 調査ノート

執筆 k-wada(Legacy Tools)

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夜の机に積み上がった大量の紙の束。一番高い山の上に載った一通の封筒だけが、画面外からの青い光にふちどられている

メールの誤送信は、実際にどれくらい起きているのでしょうか。個人情報保護委員会やIPAなどの公開資料を確認しましたが、メールの誤送信だけを切り出して「日本で年間○件」と示せる数字は確認できませんでした。理由のひとつは、誤送信がほかの事故とまとめて集計されていることです。

「誤送付2,889件」は、メール2,889件ではない

個人情報保護委員会の「令和7年度年次報告」は、個人情報取扱事業者等から委員会へ直接報告された漏えい等13,345件について、原因別の内訳を公表しています。対象期間は2025年4月1日から2026年3月31日までです。

そのうち、報告した事業者自身のところで起きたものが11,040件(82.7%)で、その内訳は誤交付が6,072件(45.5%)、誤送付が2,889件(21.6%)でした。割合はいずれも13,345件に対するものです。

ただし、この「誤送付」はメールだけを数えたものではありません。報告書が発生原因の例に挙げているのは、病院や薬局における書類等の誤交付と、クレジットカード等の誤送付です。2,889件をそのまま「メール誤送信の件数」と読むことはできません。

別の統計では「誤表示・誤送信」でまとめられる

東京商工リサーチ TSRデータインサイトの調査では、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は180件でした。原因別で最も多いのは「ウイルス感染・不正アクセス」の116件(64.4%)で、「誤表示・誤送信」は37件(20.5%)です。

同社は人為的なミスの例として、メール送信時のCC・BCCの取り違えのほかに、システムの誤設定を挙げています。こちらも、メールだけで何件かは分かりません。

さらに、この調査は上場企業とその子会社が公表した事故を同社が独自に集計したものです。個人情報保護委員会の数字とは、対象も集計方法も違います。

「10大脅威」の順位も、発生件数ではない

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、「不注意による情報漏えい等」が組織向けの10位に入りました。2026年版では10位以内に入っていません。

しかし、これは誤送信が減ったという意味ではありません。10大脅威は事故件数のランキングではなく、前年に社会的な影響が大きかった事案からIPAが候補を選び、研究者や企業の実務担当者など約250名からなる「10大脅威選考会」の審議・投票で決めているためです。

数字を見るときに確認すること

メール誤送信の数字を見るときは、何を数えているか・誰が対象か・メール以外の事故が同じ区分に入っていないかを確かめると、読み違えを避けられます。

今回確認した資料からは、誤送信が起きていること自体は分かります。ただし、集計の違う統計をつないで「日本ではメール誤送信が年間○件ある」と言うことはできません。

参照資料

  • 個人情報保護委員会「個人情報保護委員会 令和7年度年次報告」 — 発行: 個人情報保護委員会/対象期間: 2025年4月1日〜2026年3月31日/公表日: 2026年7月7日/公表ページ・外部サイト。引用箇所は本文p.9と付表2(2)⑤(本文PDF・外部サイト)。内訳の母数は委員会直接受付分13,345件です
  • 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「上場企業の『個人情報漏えい・紛失』事故 2番目の180件発生、漏えい人数は約2倍増の3,063万人分」 — 発行: 株式会社東京商工リサーチ/対象: 2025年に上場企業とその子会社が公表した事故(同社の独自集計)/公開日: 2026年1月30日/外部サイト
  • IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」「情報セキュリティ10大脅威 2026」 — 発行: 独立行政法人情報処理推進機構/公開日: 2025年1月30日・2026年1月29日/2025年版・外部サイト2026年版・外部サイト

本文の数値は2026年9月12日に、いずれも各原典で確認しました。次の確認予定は2027年2月28日で、IPAの2027年版とTSRの2026年調査が公表された後に見直します。

タグ: 誤送信・統計・個人情報・送信前の確認