生成AIに個人情報を送ってしまう理由 — 見落としやすい5つの場所
生成AIに貼り付ける文章には、読ませたい本文の周りに個人情報が付いてくることがあります。署名、過去の返信、申込文、表、ログという見落としやすい5つの場所と、消すのではなく「答えてもらうために必要か」で決める考え方をまとめました。
この記事の見出し

生成AIに個人情報を送ってしまうのは、「個人情報を入力しよう」としたときだけではありません。
メールを要約してもらう。文章を整えてもらう。エラーの原因を聞く。こうした普段の作業で貼り付けた文章に、名前やメールアドレス、電話番号などが一緒に入っていることがあります。
特に見落としやすいのは、自分がAIに読ませたい本文ではなく、その周りに付いている情報です。
個人情報が混ざりやすい5つの場所
1. メールの署名
本文だけを直してほしいつもりでも、末尾には氏名、会社名、部署、電話番号、メールアドレスなどがまとまっていることがあります。
AIに文章表現を直してもらうだけなら、署名はたいてい不要です。
2. 過去の返信
メールをそのままコピーすると、自分が書いた部分だけでなく、過去のやり取りまで付いてくることがあります。
そこには、相手の氏名、メールアドレス、別の担当者の名前などが含まれている場合があります。
必要な部分だけ切り出すだけでも、送る情報はかなり減らせます。
3. 問い合わせフォームや申込文
「この文章を読みやすくして」と貼り付けた文章に、氏名、住所、電話番号、注文番号などが入っていることがあります。
文章を直すだけなら、次のように置き換えても、多くの場合は意味を保てます。
- 「山田太郎」→「利用者A」
- 「090-0000-0000」→「電話番号」
4. 表やCSV
表は特に注意が必要です。
自分が見せたい列は売上や分類だけでも、その横に氏名、メールアドレス、顧客番号などの列が残っていることがあります。
AIに聞きたいのが集計の方法なら、実データではなく、次のような例に置き換えられないかを考えます。
| 年代 | 商品 | 金額 |
|---|---|---|
| 40代 | 商品A | 3,000円 |
5. エラーログや画面のコピー
技術的な質問でも、ログや画面からコピーした文字列に、ユーザー名、メールアドレス、ファイルパス、URL、識別番号などが入っていることがあります。
エラーの原因を聞くために、その値そのものが必要とは限りません。user@example.com を [email] にするなど、意味を保ったまま置き換えられる情報は少なくありません。
「個人情報だから全部消す」ではなく、必要かどうかで考える
まず、この情報は、AIに答えてもらうために本当に必要かと考えます。
文章の言い換えなら、実名はほぼ不要です。表の集計方法なら、実際の顧客データは不要かもしれません。一方で、住所の書き方を質問するなら、住所の形そのものは残す必要があります(値は架空のもので足ります)。
必要でなければ、次の3つでかなり整理できます。
- 削除する
- 「利用者A」のように置き換える
- 実データではなく架空の例にする
最後に「端」を見る
送信前に全文を一字ずつ確認するのは大変です。そこで私は、まず文章の上と下、引用部分、表の横を見るのが現実的だと考えています。
本文そのものより、宛名、署名、過去の返信、表の不要な列、ログの識別情報のほうに、AIへ渡す必要のない情報が残っていることがあるからです。自分の場合も、後から気づくのは決まって端のほうでした。
送った後の扱いは、サービスや契約、設定によって違います。個人情報保護委員会も、一般の利用者向けの留意点として、生成AIサービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を十分に確認し、入力する情報の内容を踏まえて利用を判断するよう示しています。
仕事の文書なら、自分の判断より先に社内規程や取引先との契約があります。業務で扱う情報の線引きは生成AIに業務文書を貼る前に確認する4か所に書きました。
Safe Privacy Gateは、この送信直前の確認を補助する道具です。気になる情報を表示しますが、送ってよいかどうかを自動で判断するものではありません。
補足: 個人情報保護委員会の注意喚起について
この資料(令和5年6月2日公表)は、個人情報取扱事業者向け・行政機関等向け・一般の利用者向けの3つに分かれています。本文で触れたのは3つ目の「一般の利用者における留意点」で、次の3点が挙げられています。
- 入力した個人情報が機械学習に利用され、他の情報と統計的に結びついた上で、正確または不正確な内容で出力されるリスクがあること
- 応答結果に不正確な内容の個人情報が含まれるリスクがあること
- 提供事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を十分に確認し、入力する情報の内容等を踏まえて利用を適切に判断すること
仕事で個人データを扱う場合は、別に事業者向けの注意点が書かれています。本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある、という内容です。
この資料は2023年のもので、委員会自身が今後追加の注意喚起等を実施する可能性があると書いています。最新の情報は委員会のサイトで確認してください。
参照資料
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日公表・外部サイト)— 一般の利用者における留意点(別添1 の(3))と、個人情報取扱事業者における注意点(同(1))。www.ppc.go.jp/news/press/2023/230602kouhou/
2026-09-12 に、公表資料のPDF本文を取得して参照しました。